日本一何かが起こりそうな飲み屋へ。学生の学生によるみんなのための居酒屋「あるばか」。

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ここは大都会東京。今日も今日とて、仕事帰りのサラリーマンやOLたちが憩いを求めて聖地 新橋へ赴く――

そのお店は、それはそれはひっそりと、周囲の店舗に溶け込むように存在していた。

「学生居酒屋 あるばか」

学生限定の居酒屋でもなければ、学生がメインで集まる居酒屋でもない。学生がオーナー兼従業員として運営する、学生の学生による大衆のための居酒屋なのだ。すなわち、仕入れから仕込み、メニュー決め、接客、調理、経理、人事に至るまでのすべての業務を学生が行っている、日本で唯一の居酒屋(たぶん)である。
ひょんなことから「居酒屋の店長をやっている」と述べる早稲田大学3年のバッファロー氏(あるばか現店長)と知り合った当編集部は、その居酒屋の実態を探るべく、半信半疑ながらお店へと足を運んだ。「学生居酒屋 あるばか」その正体は一体!?

正真正銘居酒屋でした

新橋駅から歩くこと3分、数多くの飲み屋が軒を連ねる中「あるばか」の看板を発見。どうやらお店は地下にあるらしい。恐るおそる階段を降りると、突き当り左手に引き戸の入り口。こんばんはの声とともに扉を開けると、まず迎えてくれたのは店長のバッファローさん。生まれたときから店長なんじゃないかと思える雰囲気を持つ彼ももちろん学生で、あるばかオリジナルTシャツがきまっている。
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奥に長い10畳ほど店内は、カウンター一枚で調理スペースと客席が仕切られており、店内のいたるところに酒瓶が所狭しと並べられている。少し緊張していたけれども、アットホームな雰囲気に一安心。というより、学生が経営しているということで若者らしいポップなお店を想像していたのだが、これはガチで新橋の居酒屋ではないか!(かく言う筆者は今回が初新橋であることも付け加えておこう)。入ってすぐのカウンター席に案内されると、隣にはすでにお客さんの姿が!(現在時刻19時)。お店自体は17時から営業しているということで、早めに仕事を終わらせたサラリーマンが夕方から飲みに来るのだという。

こだわりが詰まった手作り料理たち

席に着くと、事前予約者には手書きのかわいらしい旗を立てて席を確保してくれているという粋な計らい。定番の飲み物を頼んで一息ついたところで出てきたのはポテサラ。

「お通しのポテトサラダです。マヨネーズを使ってないのでヘルシーですよ!」

そう言ってカウンター越しに渡してくれたのは、大学1年生の本日のシェフ。

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笑顔がとっても素敵!この彼女、メニュー考案や仕込みも担当しているということで、シフトが入っているときには15時にお店に来て下ごしらえをするそう。もちろん大学にもきちんと通った上でだ。
そろそろ食べ物もいただくかとメニューを手に取ると、えっ?

どれも安くないですか!?

しかも「秋鮭の雲登り~ネギ塩あんなソース~」やら「ハッピー貧乳スープ」「べーやんのまかない丼」など、オリジナルすぎるメニューがたくさん!(正直味の想像がつきません!笑)これは食べてみるしかないな~と思い、いくつか料理を注文する(ちなみにカウンター奥には「本日のおすすめメニュー」も。すごすぎます)。そうして出てきたサラダには自家製の燻製ベーコンが使われ、お豆腐はなんと豆乳ににがりを加えて手作りしているという徹底ぶり。

「手間かかりませんか?」
「でも手作りの方がおいしいですから」

確かに豆腐は甘味があって、なめらかでとっても美味!もはや学生とか関係なくいいお店だなぁ。

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客も店員もみんなが楽しく

20時を迎えるころには8席あった席も全て埋まり、店員さんとの会話も楽しみつつ料理を口に運んでいると、突然隣から声をかけられた。

「もしかして今日がはじめてですか」
「はい、そうなんです。お兄さんは?」
「僕はかれこれ3年くらい通っていますねぇ」
「じゃあ会社もこの近くで?」
「いえいえ、会社は世田谷の方で」
「じゃあお家が近いんですね」
「いえ、千葉に住んでます」

え、ええー!?じゃあわざわざ世田谷から新橋に寄って、それから千葉に帰る…?このお店どれだけ愛されてるんだ。しかも月に1~2回は来店しているというから恐るべし。さらに鍋を食していたその常連さんは、「この出汁はうますぎる!追加料金払うからこれで雑炊作ってくれない?」とカウンター奥にリクエスト。そして「仕方ないなぁ。じゃあ150円で!」と答えちゃうシェフ。それを見てドッと笑う他のお客さん。物理的にも心理的にも店員さんとお客さんの距離が近いこと、そしてお客さん同士も不思議と仲良くなってしまうこの雰囲気が、あるばかの魅力だと思う。

誰もやったことがないことを。居酒屋経営のはじまり

あれ?ところで3年前から通っているって、ここは3年前からやっていたのか……?
聞くところによると、バッファロー店長は6代目の店長らしく、基本的にすべてのメンバーが1年で代替わりをするらしい。つまり、6年前から続いているのだ。就職活動が今よりもずっと厳しい状態にあった当時、多くの学生は決まり損ねては大変と、早くから就職活動を始め、その結果3年生のうちに内定が出ているのが普通だったという(そのあおりを受けて最近の就活はぐっと解禁が遅くなっている)。残りの学生生活はバイトしてお金溜めてたくさん海外旅行に行こう!という学生が多数を占める中、初代メンバーは考えた。学生時代にもっとやっておくべきことがあるんじゃないか、海外旅行は社会人になってもいけるではないか、もっと何か特別なことを――
そうして考えついたのが居酒屋経営。社会人になったら、みんなそれぞれの道を歩き始めるけど、学生時代の今だけはみんなで何かをやりたい。インターンばかりが成長じゃない。学生の誰もやったことがない居酒屋経営をやろう。新橋に安い店舗を見つけ、2010年9月8日、期待と不安を同じくらい抱えながら、学生居酒屋 あるばかはオープンした。

多様性あふれるメンバーで

それから時を重ね、現在は6代目のメンバー10人がお店を切り盛りしている。メンバーは毎年SNSでの募集や知り合い経由で集まるそうで、みな個性的なメンバーばかり。正直大学3年生には到底見えないバッファロー店長は、自分がお客さんに給仕して一番しっくりくるお店の形態はなんだろうと考え、居酒屋が一番しっくりくるとの賢い決断を下した結果、あるばかに出会ったらしいし(実際カフェ店員には見えない笑)、調理担当の尾原さんは東京農業大学のなんと1年生で、サークル探しの際にたまたま当時のあるばかのメンバーに出逢い、その縁で最初にお店に遊びに行った際に飛び入りでメンバー入りを果たしたのだそう(ちなみにそのときすでに6代目メンバーは定員に達していた模様)。豹の着ぐるみ(?)を着て現れた柳瀬さんは大学を卒業後、吉本興業のNSC(New Star Creation)に入るために上京し、お笑いを通してコミュニケーション力や間の取り方を磨いているのだという(確かにとってもお話上手!)。
取材日には会えなかったけども、あるばかにはメニューと一緒に手作りのメンバー紹介カードが用意されており、どんな学生がいるのかを伺い知ることができる。遠いところでは埼玉からわざわざ通って来たりもしていて、大学も関係なく趣味もてんでバラバラで、それなのにこうして一人ひとりがそれぞれ想いを持ち、自分の得意なことを活かして経営にあたっていることが素敵だなと思う。
IMG_1505(バッファローさん、柳瀬さん、尾原さん)

想いと覚悟と。サークルじゃなくて本気の経営を

ちなみに、代替わりの際には前の代から次の代がお店を買い取る方式で引き継ぐ(メンバーの頭数で割って出資)らしく、並大抵の想いと覚悟では務まらない。経営が順調にいけば元手は回収できるけども、最初から学生がそんなに大きなお金を持っているはずもなく、親に想いをぶつけて頭を下げてお金を借りるメンバーもいるとか。また、メンバーはアルバイトではないため、時給制という形で働いているわけではなく、売上から材料費や諸々の経費を差し引いた金額を役割や仕事量なども考慮してメンバーに分配するという。また、買い取り方式のため、各代はあるばかのコンセプトは大事にしつつも、お店の内装からメニューや企画まで、基本的に自分たちの好きなように運営することができる。もちろん時には意見が合わず喧嘩になったりすることもあると言うが、こうしたこともすべてひっくるめて自らお店を経営することの醍醐味なのだろう。

しかしこの度、2月末を以て6代目は7代目へと経営を引き継ぐ。しかし代が替わっても、あるばかが居心地の良い第2の家のような温かさを持った居酒屋であることはきっと間違いない。うまくいかないときや落ち込んだときは、ぜひあるばか思い出して欲しい。メンバーの明るさと手料理の温かさ、隣に座ったお客さんの陽気さとほっとする空気から元気がもらえること間違いないだろう。

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学生居酒屋 あるばか
日本一何かが起こりそうな居酒屋。
〒105-0004 東京都港区新橋4-15-8 B1F(JR新橋駅烏森口より徒歩約3分)
電話 080-5867-6722
営業時間 17:00~23:00(L.O. Food 22:20/Drink 22:30)
定休日 日曜日
お店のHPはこちら

アウトエリート編集部

アウトエリート編集部

若き異端児達の“自”論展開メディア「アウトエリート」編集部。ちょっとした瞬間や毎日の生活の中で役に立つ…かもしれない知的な情報を上手いこと編集して流していきます。

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