東大生ライター和田有紀子が問う「一票の格差」問題のパラドックス

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「アウトエリートの異論極論」と称する新シリーズ。これまでも当メディアに記事を寄稿してきたわたくし和田有紀子が、世の中で気になるあれやこれやを独自の視点で論じていきます。なにぶん歯に衣着せぬ性分ゆえ、賛否を分かつ内容も多々あるかと思いますが、異端極まる’自’論とご笑読ください。

第一弾のテーマとして取り上げたのは「一票の格差」。選挙のたびに耳にするこの問題が、私にとってはどうにも不可思議なパラドックスに思えてならないのです。

著者:和田有紀子(わだ ゆきこ)
東京大学経済学部4年生。高校生のときに第2回田辺聖子文学館ジュニア文学賞「読書体験記の部」で最優秀賞を受賞。大学生向けサイトglobal innovation naviの編集長を務めた後、ライター兼学生キャップとしてアウトエリート編集部に参画中。

「一票の格差」は法の下の差別か?

例えばある選挙区では有権者100万人から1人の代議士を選び、また別の選挙区では50万人から1人を選出する場合、後者の選挙区に所属する有権者の1票の重みは前者の2倍となります。

にもかかわらず、これら選挙によって選出された代議士が議会で持つ一票の重みはみな同じため、結果的に住む地域によって投票者である国民の一票の重みに差が出てしまうことを「一票の格差」といいます。

これまでにも最高裁にて違憲判決はいくつか出ていますが、その根拠となる憲法第14条と第43条では以下のように述べられています。


憲法第14条第1項
―すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


憲法第43条
―両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。


これだけを見ると、確かに「法の下に平等」との記述はありますが、第14条は平等権全般に関して謳っているものであって、選挙の実施に対して取り立てて「一票が平等でなければいけない」との直截的記述はありません。

続く、人種・信条・性別・社会的身分や門地によって意図的に一票に差が出るよう差別しているわけでもありません。

つまり、今の日本において法的どうしても一票の格差を是正しなければいけないという根拠はないように思われるのです。

都市部に住むと被る「一票の不平等」

もちろんあまりにも差が大きすぎることは決して褒められたことではないので、国も選挙区の再編や選出法の改訂などで対応はしています。

いわゆる「4増4減」とか「0増5減」とかいう定数是正などがこれにあたりますが、そうやって選挙区の有権者数に合わせて「是正」を行うことは、すなわち人口の多い都市部ではたくさんの議員が選ばれ、人口の少ない地方道府県ではますます少数の議員しか選ばれなくなるということであり、地方の声を掬い上げにくくなるということです。

現在の参院選においては、東京都が10人区、神奈川県と大阪府が8人区であるのに対し、2人区は31県にものぼります。それでもなお、都市部の人口が圧倒的に多いため、一般的に地方と比べて一人あたりの一票の重みが軽くなっており、これを是正しろ!との動きが強まっているのが現状です。

「一票の不平等」を訴える方々へ、謹んでご提言申し上げます

参院選挙において最も有権者数が少ない選挙区は鳥取県選挙区で、そのため一票の格差が語られる際の基準とされています。一方、格差の不平等を声高に唱えるのは、一票の価値が低くなりがちな大都会東京に住む文化人だったりしています。

そこでそんな大都会に住む反対派の皆さま方へ、わたくしから謹んでご提言申し上げます。

「そんなに自分の一票の重みを増したいのであれば、鳥取に移住したらよろし」

そうすれば、鳥取の過疎化も解消され、都会の圧倒的な人口集中も緩和され、自分の一票の重みを増したい人はそれが実現できる―根本的な問題解決に近づくわけです。

わかりやすい例として鳥取県を挙げていますが、一票の格差が起こるのが鳥取の人のせいでないのと同じように、人口が最も少ないのも県内総生産が最も低いのも鳥取県民のせいなわけではなく、だけどそうしたことが背景にあってスターバックスの進出は日本一遅いし、ユニクロも吉野家も県内に3店舗しかなかったりと、一票の重みの軽い都会に比べて「不平等」を被ってるわけです。

例えば東京都には、人口10万人あたり2.12軒のスタバがありますが、鳥取県には0.16軒しかありません(しかもまだOPENしてない!)。さらにこの2.12軒、東京でも特に山手線内など中心部に行けばいくほど、ますますスターバックスには困らなくなるはずです。ですが、鳥取県ではスタバに行こうと思ったらわざわざJR鳥取駅まで足を運ばなければ巡り合えないのです。

スターバックスだけでなく、他にも「集積の利益」とも呼べるものを都市部の人は日々享受しています。もちろん地方だからよいこともありますが、人が集まっているからこそ企業が集まり、経済が発展し、様々なエンターテイメントも生まれ、その恩恵を意識せずとも受け取れているのは都市に住んでいるからです。なのに、一票の格差だけを取り上げて「不平等だ!」「生来の権利が侵されている!」と叫ぶのはおかしくありませんか。

「平等」が「公正」とは限らないパラドックス

社会は様々なアクターが折り重なって動いていますから、何事もそれ一点だけを取り上げて是正しようというのは難しいことです。不平等であるということは倫理的に正しくありませんが、「都市部と地方での人口がますます広がってきている」という根本問題の解決を考えずに小手先だけで変えようとするのがそもそもの間違いです。

市区町村の区割りなどを撤廃してしまって、日本を北から順に一定の人口ずつに分けて選挙区を作り、ほとんど完全に一票の格差のない形で選挙を行うことは理論上は可能かもしれません。ですが、間接民主主義の根幹には、自分たちの住む行政区の声を市政・県政・国政へと反映しやすいようにするという意味があるはずです。

スイスのような直接民主制では一票の格差は起こらないかもしれませんが、そのやり方では日本にいる1億人超の有権者の声をますます掬い上げにくくなることでしょう。

もっともらしい「べき論」を掲げて悪戯に司法に訴える先に一体何を求めるのか、都市部と地方という異なる背景下の平等が本当に真の公正と言えるのか……うわべだけの平等を追求する行為の先には、地方の声がますます通りにくくなる不公正な結末が待ち受けるような気がして、どうにも私には腑に落ちないパラドックスです。
みなさんはどのように考えますか。

アウトエリート編集部

アウトエリート編集部

若き異端児達の“自”論展開メディア「アウトエリート」編集部。ちょっとした瞬間や毎日の生活の中で役に立つ…かもしれない知的な情報を上手いこと編集して流していきます。

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